借金返済「連帯保証人の責任範囲と過払い問題」

上記
管財
業務

主文

1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は,控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1 控訴の趣旨

1 原判決主文第2項及び第3項を取り消す。
2 被控訴人は控訴人に対して,金50万円及びこれに対する平成12年6月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は,本訴反訴を通じ,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
4 第2項につき,仮執行宣言。

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第2 事案の概要

本件は,被控訴人が控訴人に対して連帯保証契約に基づく貸金請求事件の本訴を提起し,控訴人が被控訴人に対し,控訴人が主債務者の取引経過の開示を求めたにもかかわらず被控訴人がその開示をせず本訴を提起したことなどが不法行為に当たるとして,慰謝料及び弁護士費用の損害賠償金並びにこれに対する遅延損害金の支払を求める反訴を提起した事案であり,本訴反訴共に請求を棄却した原審判決に対して,原審反訴原告のみが控訴を提起したものである。

1 前提事実(以下の事実は,記録上明らかな訴訟上の事実であるか,当事者間に争いがないか,末尾掲記の証拠によって容易に認定できる。)

・ 被控訴人は,貸金業等を業とする株式会社である。
・ 昭和63年4月12日,被控訴人は,訴外A(以下「A」という。)との間で,Aが被控訴人から金銭の借入等ができるクレジットカード利用契約(以下「本件基本契約」という。)を締結し,控訴人は,Aの被控訴人に対する本件基本契約による債務について連帯保証した(以下「本件連帯保証契約」という。)。
・ 平成11年10月1日ころ,控訴人代理人は,被控訴人に対し,控訴人から債務整理の委任を受けたことを通知し,併せて,債務残額を確定の上分割払いによる示談案を提示するので,「債権届出書」,「控訴人の債務に関する基本契約書の写し」及び「これまでの貸付・入金の状況についての明細」を控訴人代理人宛に送付するよう依頼した(乙1の1及び2)。
・ 同月12日ころ,被控訴人は,控訴人代理人に対し,債権届出書並びに本件基本契約及び本件連帯保証契約の契約書の写しを送付した(乙2の1及び2)。
・ 同年11月9日ころ,被控訴人は,平成9年7月2日以降にAに貸し付けた11口の貸付にかかる残金を利息制限法の定める制限利率に基づいて引き直し計算し,その計算書と新たな債権届出書を作成して,控訴人代理人に送付した(乙3の1及び2)。
・ 平成12年1月20日,被控訴人は,控訴人に対し,本件基本契約に基づいて平成9年11月24日以降にAに貸し付けた10口の貸付にかかる残金合計46万3339円及び残元金44万5372円に対する遅延損害金の支払を求める本訴を提起した。
・ 同年2月18日の原審第1回口頭弁論期日において,控訴人は,「被控訴人が本件基本契約以降の取引経過を全部開示したうえで,利息制限法により引き直し計算をすれば,過払いとなっていることは明らかと思料する。」旨主張した(答弁書陳述擬制)。
・ 同年3月13日,控訴人は,原審において,Aに係る昭和63年4月12日以降の貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業法」という。)19条で規定されている帳簿(以下「顧客元帳」という。)の提出を求める文書提出命令を申し立てた。
・ 同年4月28日の原審第3回口頭弁論期日において,被控訴人は,控訴人が提出を求めている顧客元帳は,民訴法220条3号後段の「法律関係文書」に該当せず,また,訴訟と関連性のない文書であるから同条4号によっても文書提出義務を負わない旨の意見を述べたうえ,別訴でも,顧客元帳の提出を命じた文書提出命令に対して即時抗告(大分地方裁判所平成12年(ソ)第2号。以下「別件即時抗告」という。)を申し立てているので,別件即時抗告における裁判所の判断が確定すれば,本件においてもその判断に従った処理をする旨主張した。
・ 同年5月30日,別件即時抗告において,顧客元帳が法律関係文書に当たる旨判断され,顧客元帳に当たる文書の提出を命じる決定が出された(乙4の2)。
・ 同年6月22日,控訴人が本件反訴を提起した。
・ 同年6月30日の原審第4回口頭弁論期日において,被控訴人は,本件基本契約に基づく利用状況明細表(貸付年月日,貸付金額,借金返済回等の貸付時当初の契約内容が記載されており,カード会員契約締結後の全ての利用状況が記載されているもの。)とAのカード利用に関する平成4年3月26日以降の入金状況が記載された入金明細表を所持しているので,これらの文書を提出する予定である旨陳述した。
・ 同年7月5日,控訴人は,昭和63年4月4日以降の原告とAの取引の存在を立証するため,Aの大分みらい信用金庫野口支店の普通預金口座に対する被控訴人からの入金及び被控訴人への引き落としの年月日及び金額に関する記載について調査嘱託(以下「本件調査嘱託」という。)を申し立てた。
・ 同月21日の原審第5回口頭弁論期日において,被控訴人は,Aにかかる「請求照会」,「個人別買上明細一覧表」,「残高照会」,「会員別入金消込一覧」を証拠として提出し,本件調査嘱託が採用された(甲4,5(いずれも枝番を含む。))。
・ 同年10月20日の原審第6回口頭弁論期日において,本件調査嘱託の結果が顕出され,控訴人は,同年12月22日の原審第7回口頭弁論期日において,個人別買上明細一覧表(甲4の3ないし5)及び本件調査嘱託の結果を基に,Aの被控訴人に対する貸金残金を利息制限法の定める制限利率に基づいて引き直し計算すると過払いである旨主張した。
・ その後,原審において証人尋問等が行われ,平成13年7月23日の第12回口頭弁論期日で原審の審理が終結し,同年9月21日に本訴反訴ともに請求を棄却する旨の原審判決が言い渡された。

2 争点

・ 取引経過不開示及び本訴提起の違法性・過失の有無
(控訴人の主張)
ア 控訴人代理人は,控訴人から任意整理について受任し,前記1・のとおり取引経過の開示を求めたのに,被控訴人は,前記1のとおり,平成9年7月2日以降の取引の計算書しか開示せず,控訴人代理人の事務員が被控訴人社員との間で本件基本契約当初からの取引経過の開示を求める交渉を行ったが,同社員は開示を拒否し,本訴が提起された。
イ 貸金業者との間の債務整理については,債務者代理人から貸金業法に付随する大蔵省銀行局事務取扱ガイドライン(以下「ガイドライン」という。)を根拠として取引経過の開示請求がされ,これに対して貸金業者が取引経過を開示して債務残額が確定されることを前提に示談交渉が進むのが原則である。
ところが,被控訴人は,自らに不利な過去の取引経過の開示を拒否して,本訴を提起したものであり,極めて不当である。
ウ また,被控訴人は,本訴の原審における答弁書において取引経過の開示を求めたにもかかわらず,その後4か月経過しても取引経過を開示しない。
エ 被控訴人が取引経過を開示せずに本訴を提起したこと及び控訴人の訴訟上の取引開示要求に対して取引経過を開示しないことは,ガイドライン及び任意整理の法慣行に違反した行為であり,違法である。
オ なお,被控訴人は,別件即時抗告の判断を待っていた旨主張するが,顧客元帳が法律関係文書に該当することは疑う余地がなく,以前の取引経過が争点と関連性があることもまた明白であり,このような明白な問題を抗争して取引経過の開示を延ばしていたことは,違法である。
カ また,被控訴人は,Aとの取引について,既に債務が過払いとなっていることを当然に知り得たのに,あえて直近の貸付だけを記載して,連帯保証人である控訴人に対して訴訟を提起し,控訴人は本来支払義務のない債務を負わされる危険に晒された。
キ 控訴人は連帯保証人であって,過去の取引経過について全く資料を所持していない者である。このような者が支払を前提として取引経過の開示を求めているのに,取引経過を全く開示しないで,直近の貸付分だけで支払請求の訴訟を提起するなどという態度は,明らかに貸金業者としての信義と正義に反する態度というべきである。
(被控訴人の主張)
ア 被控訴人は,控訴人の本件基本契約当初からの取引経過開示の要求に対し,@被控訴人の控訴人に対する債権とは関連性がなく,民訴法220条3号の文書には該当しないのではないかと考えられること,A仮に上記文書に該当するとしても,本件基本契約当初からの開示は実際上不可能でもあり必要ないと考えられること等の理由により,資料を提出することを控えてきたものである。
  これは,いかなる範囲で被控訴人に文書提出義務が存するのかに関し,参考とすべき適切な裁判例が存在していなかったためでもある。
  ただし,被控訴人は別件即時抗告において,本件控訴人代理人と同じ弁護士から同様の文書提出要求を受けており,控訴人が本件訴訟で文書提出命令を申し立てた時点では,別件即時抗告の確定を待って,その判断に従って文書提出等の処理を行う予定としていた。
平成12年5月30日に別件即時抗告で判断がされたため,本件においても,その判断に従って被控訴人の所持していた文書を提出した。
  以上からすれば,控訴人の文書提出要求に対し,裁判所の文書提出命令もない段階で文書を提出しなかったことが違法であるとはいえない。
イ 被控訴人が,過払いとなっていることを知悉しつつ本訴を提起したとの点は否認する。
被控訴人に限らず信販会社が支払督促等を行う場合は,会員契約当初からの取引について利息制限法の制限利率に引き直すという処理は行われていない。
過払いによる支払済みの主張は,いわゆる抗弁事由に該当するが,抗弁事由の存在を認識しつつ訴訟提起することが不当訴訟に該当するとはいえない。
被控訴人の本訴提起は,裁判制度の制度趣旨に照らして著しく相当性を欠くものといえないことは明らかである。
ウ 判例上,初めて取引経過の開示義務が信義則上の義務と判示されたのは,控訴人提出の証拠によれば,平成12年9月8日の大阪地裁判決である。
そのため,被控訴人は,本訴提起前に取引経過の一部を開示しないことが信義則上の開示義務に反するといった認識はなく,この点についての過失もなかった。
・ 損害発生の有無について
(控訴人の主張)
 控訴人は,取引経過の不開示及び本訴の提起により,本来支払義務のない債務を支払わされる危険に晒され,長期間訴訟に拘束され,多大な精神的苦痛を受けた。
この精神的苦痛を金銭に評価すると30万円を下らない。
 また,控訴人は,代理人弁護士を委任せざるを得なかったが,代理人弁護士との間で着手金及び報酬各10万円の支払を約した。
この金額は,被控訴人の不法行為と相当因果関係のある損害である。
(被控訴人の主張)
 控訴人は,本件訴訟を控訴人代理人に委任した後は,個別請求を受けることもなく現在まで過ごしてきたのであって,本件訴訟遂行は全て控訴人代理人に任せていたのであり,控訴人に精神的損害が発生したとは到底いえない。

第3 争点に対する判断

1 取引経過開示義務について

  控訴人は,取引経過開示義務について,ガイドライン,任意整理における法慣行,信義則を理由として,貸金業者は契約当初からの全取引経過を開示する義務がある旨主張しているが,このうち,ガイドラインは行政指導であるから,これを直接の根拠として被控訴人の控訴人に対する私法上の取引経過開示義務が認められるものではない。
また,任意整理における法慣行についても,証拠(乙5(枝番を含む。))によれば,控訴人の主張するような任意整理が,消費者から委任された弁護士等により広く行われていることは認められるものの,それが,法慣行として被控訴人の控訴人に対する私法上の取引経過開示義務を基礎付けるほどに成熟したものとまで認めるに足りる証拠はない。
しかしながら,貸金業者とその顧客である消費者は,契約内容や借入利息等に関する法的知識及び判断力に格差があり,消費者は多数回の借入や返済に関する記録の重要性を認識せず,その全てを保存していないこともままあり,まして,主債務者の保証人は,借入や返済に関する記録を入手することが困難な場合が多いと考えられること,これに対して,貸金業者は,業務として契約・貸付・返済に関する情報を管理しており,これを開示することも容易であることに鑑みると,貸金業者は,契約の付随義務として,借主ないしは保証人から全取引明細の開示を求められたときには,必要もないのに開示請求をした場合とか,貸主において開示を拒絶する合理的な理由がある場合でない限り,開示要求に応じるべき信義則上の義務を負うというべきである。
  これを本件についてみると,控訴人は,本訴が提起される前においては,債務残額を確定の上分割払いによる示談案を提示する予定であることを示して本件基本契約当初からの取引明細の開示を求め,また,本訴が提起された後においては,取引経過を開示すれば過払いとなっているはずである旨主張していたのであるから,合理的な必要性があって開示を求めていたと認められ,他方,被控訴人は,開示する必要がないのではないかと考えていたというだけであり,控訴人に開示を拒絶する合理的な理由が客観的に存したとは認められない。
したがって,被控訴人は,控訴人が本訴提起前に取引経過の開示を求めたときから,本件基本契約の付随義務として,全取引経過を開示する義務があったと認められる。

2 取引経過非開示及び本訴提起の違法性・過失の有無(争点1)について

次に,被控訴人が取引経過開示義務に反して取引経過を開示せず,本訴を提起し,その後も取引経過を開示しなかったことについて,不法行為を構成するほどの違法性が認められるか否かを検討する。
・ 本件の事実経過は,概ね前記第2の1記載のとおりであるが,本訴提起前の交渉状況については,証拠(甲7の1,8)によれば,控訴人からの平成11年10月1日付書面でされた取引経過開示要求(第2の1・)に対して,被控訴人が,同記載のとおり利息制限法の定める制限利率に基づいて引き直し計算をしていない債権届出書を送付し,これに対して,控訴人側から,「今残っている分だけで結構ですので,利息制限法に引き直して提出してください。」との要望が出され,これを受けて被控訴人が同・記載の計算書等を送付したこと,その後,控訴人が,当初
より遡って引き直した資料でないと和解検討できない旨主張したので,被控訴人は,既存の利用分に関する資料しか提出できないなどとして本件基本契約当初からの取引明細の開示を断って本訴を提起したことが認められる。
  そして,前記第2の1認定事実によれば,その後,控訴人は,取引明細を開示した上で利息制限法の定める制限利率に基づいて引き直し計算をすれば過払いとなっていることは明らかである旨主張し,顧客元帳の文書提出命令を申し立てたが,被控訴人は,直ちには取引明細を開示せず,別件即時抗告の判断が出ればそれに従うとの態度を示した。
・ ところで,被控訴人が,このように取引経過を開示せず,また,本訴提起に至ったのは,本訴に現れた被控訴人の主張からすると,被控訴人が友永に貸し付けた金員は,本件基本契約に基づく一体としての継続した取引ではなく,1回毎に独立した別個の貸付であったと認識していたこと,その場合,被控訴人が開示すべき取引経過とは,本訴で請求した貸付に関するもののみで足り,それ以前の取引については開示する必要がないと考えていたことによると認められる。
このような被控訴人の態度は,前記1判示のとおり被控訴人が全取引明細の開示義務を負っていると解すべきことに照らすと,結果的にはその開示義務に違反したものといわざるを得ないが,本件全記録によるも,当時,控訴人は,被控訴人に対する不当利得返還請求ないしは本訴における不当利得返還請求権による相殺の意思表示をすることを明確には示していなかったこと,控訴人側も,一度は,今残っている債務だけで利息制限法の制限利率に基づいた引き直し計算をするよう求めたこと,また,証拠(乙9ないし12の各2)及び弁論の全趣旨によれば,本件において取引明細の開示の要否が争われていたころには,未だ取引経過開示義務の存否を具体的に判断した裁判例といえるものはなかったと認められる(乙6の1及び2はこのような裁判例に当たらない。)ことなどからすると,別口の債務については開示する必要性なしと考えていた旨の主張も,そのような見解を採ったことが全く不合理であるとまでは言えない。
また,被控訴人は,原審において取引明細の開示を拒否していた段階でも,別件即時抗告の判断が出されれば,その判断に従うことをあらかじめ表明し,別件即時抗告の判断が出された後は,その判断に従って被控訴人が所持していた貸付に関する明細を開示したものであるから,控訴人は,別件即時抗告の判断が出されるまでは自己の法的見解を主張して真摯に争っていたにすぎず,別件即時抗告でその見解が否定された後は,裁判所で出された判断に従った対応を採ったと評価することができる。
・ さらに,訴訟提起に不法行為を構成するほどの違法性があるというためには,提訴者が当該訴訟において主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものである上,提訴者がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて提起したなど,裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠く場合に限られると解すべきである(最高裁昭和63年1月26日第三小法廷判決・民集42巻1号1頁参照)ところ,証拠(甲2,3(枝番を含む。))及び弁論の全趣旨によれば,本件において,被控訴人は,各貸付が別口の債務であると認識し,被控訴人において残存していると判断した債権について本訴を提起したこと及びAに対する従前の貸付について過払いが生じていたとしても,相殺の意思表示がされるまでは控訴人に対する保証債務履行請求権も存在すると考えていたものと認められる。
したがって,本件において,被控訴人が控訴人に対する請求が理由のないものであることを知っていたとは認められない。
また,前記・認定事実によれば,通常人であれば容易にそのことを知り得たとも認められない。
・ そうすると,被控訴人が,取引経過を開示せず,本訴を提起し,その後も取引経過を開示しなかったことは,結果的には不当であったといわざるを得ないが,これらの被控訴人の行為が不法行為を成立させるほどの違法性を有するとは認められない。

3 結論


よって,控訴人の反訴請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がないので,本件控訴を棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法67条1項,61条を適用して,主文のとおり判決する。

過払い金を請求するためには?

過払い金を請求するためには、まず第一に自分が払い過ぎた金額を計算しなければなりません。
そのためには、お金を借りた業者との取引履歴が必要になります。
取引履歴は基本的に貸金業者に依頼をすれば、7年間保管する義務のあるものなので、取り寄せることが可能です。
7年以上に遡って調べる場合、推定計算という方法で計算をすることになります。
こうして書くと、過払い金の請求は非常に手間の掛かる作業であることが分かると思います。
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破産会社に対する給与債権
被告は,現在の破産実務において,従業員の破産会社に対する給与債権の 配当等ないし破産管財人報酬に係る源泉所得税について破産管財人によって徴収及 び納付がされる例が少なからず存在する旨主張するが,本件において,このような 事実を認めるに足りる証拠は提出されていない。また,課税庁において,本件以外 に破産管財人による破産債権の配当又は破産管財人の報酬の支払に係る源泉所得税 について納税告知等の処分をした例があることを認めるに足りる証拠はなく,後記 認定の破産実務の取扱いに照らしても,少なくとも,従前このような例はほとんど なかったものと推認される。
イ(ア) 東京地方裁判所民事第20部(破産再生部)は,平成5年9月1日発行 の「管財業務ニュース」において,管財事務としての給与,報酬の支払(破産管財 業務を遂行するため履行補助者を雇用した場合の賃金や給料の支払及び税理士の補 助を受けた場合の報酬の支払)につき,破産管財人に源泉徴収義務があるとし,他 方で,給与,退職金の配当については,従前,源泉徴収をするのが適当であるとし ていたが,この取扱いを改め,配当表に基づく配当は,給与,退職金の支払の性質 を失い,源泉所得税の徴収納付義務を負わないとの見解を採る旨を公表し,その後, 現在に至るまでこの取扱いを改めていない。